ナスと玉子の結婚~mariage~
なす子さんは、5年前に勤め先を退職して、単身アメリカに渡りました。いわゆる「自分探しの旅」というやつです。
5年前、そろそろ女としての旬が過ぎ、自慢のハリ・ツヤにも影が差しお肌の曲がり角、なす子さんは、身を固めてはと周囲にも母親にも言われ、見合い結婚を勧められていたのです。 相手は地元では名の知れたお米さん。なす子さんよりはずいぶん年上で傲慢な人でしたが、地主の一族で、なす子さんにとっては申し分のない相手です。
その頃、なす子さんには好きな人がいました。冷蔵庫の隙間からちらっと見えた、玉子くん、一目惚れでしたが、その日からなす子さんは玉子くんのことばかり考えるようになっていたのです。 玉子くんは、なす子さんにとって白馬に乗った王子様でした。
安定と将来を考えれば、お米さんとの結婚だし、、玉子くんは単なる片思い。なす子さんは一年あまり悶々として、そうしたらなんだかもういろいろどうでもよくなって、気晴らしにL.A.に行くことにしたのです。
1週間ほど観光やショッピングを楽しんだなす子さん、最終日に空港のカフェテリアで食事をしていると、なんだか見たことのある顔が横切りました。
「あれ、玉子くん?」
「ハローベイビー 僕は玉子くんじゃないよ。 僕はMr.エッグマン、玉子くんていうのは君のボーイフレンド?」
(わけのわからんやつと関わってしまった…)
スルーしようとしたなす子さんでしたが、相手の華麗なトーク術に巻き込まれ、搭乗まで時間もあったので、よくよく話してみると、玉子くんに似たこの男は、玉子くんの親戚で、シリコンバレーで働く陽気なエンジニアだったのです。
そんなMr.エッグマンは、はた目には軽くてチャラいけれど、フットワークも軽くて中身は意外に芯のあるやつで、空港で意気投合したなす子さんに会いに、数週間後には東京まで来てくれたのです。
しばらくの遠距離恋愛の後、2年後にはお互いの両親に挨拶、給与の3か月分かは知らないけれど、婚約指輪を買って、指がないのでネックレスにして首にかけて
なす子さんは今、アメリカで幸せに暮らしています。
たまに夫との出会いについて、人に訊かれることがあると
「ううん、はっきりいって、私は玉子じゃないから玉子の気持ちはわからないし、向こうだってナスの気持ちがわかるわけない。でも、とにかく彼といると楽しいしとても居心地がいいの。これは運命なのかも!」
なす子さんは、NASCO EGGPLANTSという名前で作家として活躍しているそうです
二人の幸せを噛みしめたい方は、ナスとひき肉のポーチドエッグ丼やら、ナスのミートソースと玉子のグラタンやらをお召し上がり下さい。
by boushiseijin | 2014-02-07 13:58 | life