奇妙な生活~僕と妻と娘

 昨夜偶然にも妻と娘の会話を盗み聞きしてしまった僕は、妻と娘に愛されていることを知ってすっかりホクホクしていた012.gif あの二人、なんだかんだ僕のことが好きなのに、面と向かっては照れて言えないだけなんだな。

 上機嫌で帰宅すると、珍しく妻と娘の姿がない。

 テーブルには、僕のぶんの夕食が用意されていた。

 
f0231250_15112682.jpg


 よく見ると、ベッドに手紙と掛け軸のようなものが置いてある。 どれどれ、封筒を開けて読んでみる。


 愛する夫、○○様

 突然こんな手紙を差し上げねばならず、申し訳ございません。ある程度任務が終了したため、我々はこちらを去らなければなりません。 心配しないで下さいね。私たちは大丈夫です。
 短い間でしたが、私は本当にあなたの全てが好きでした。 これからあなたの前に、もっと素敵な人が現れるかもしれません。そのときは、私たちのことなど忘れて、どうぞその方と幸せになって下さい。
 もし私のことが忘れられず、会いたくなったら、いつでもこの絵を見て私を思い出して下さい。

 千年後と言わず、百年後の来世にまたお会いしましょう。

f0231250_15234353.jpg



 ふむ、ずいぶんと奇妙ないたずらだ。料理が冷めていないので、二人ともどこかに隠れているのかな?
 僕は風呂場やクローゼット、ありとあらゆる所を探し、妻と娘を呼んでみたが、彼女たちはどこにもいなかった。僕はしかたなく、冷めないうちに夕食を食べて、シャワーを浴び、床に就いた。


 翌朝も、数日が経っても、彼女たちは戻って来なかった。念のため、警察に相談してみたが、ろくに相手にしてくれず、しつこく詰め寄ると専門家に訊いてみると言って、精神科を紹介してくれた。

 僕は病気ではないので精神科を受診しても仕方がないと思ったが、職場には病んでいる人が多く、精神医学には少し興味があったので、軽い気持ちで病院に行ってみた。先生は、警察と違い親身になって僕の話をよく聴いてくれた。「急に奥さんと娘さんがいなくなって、興奮、いや混乱していらっしゃるんですね、お疲れなんでしょう。嫌でないのなら、少しここに泊まってお休みしてみませんか」と申し出てくれた。仕事があるので気が引けたが、上司に連絡すると、数日間なら有給休暇も使えると、快諾してくれた。

 ここでは、6:30に起床してラジオ体操、7時に朝食、12時に昼食、17:30に入浴、18:30に夕食、22:00消灯、就寝と、とても規則正しい生活を送っている。みんな優しくしてくれるし、何より、22:00の消灯の後、いなくなったはずの妻と娘が僕の前に現れるのだ! どういうわけか、夜が明けると彼女たちはまたいなくなってしまうのだけど、僕はとても充実した日々を送っている001.gif
[PR]

by boushiseijin | 2013-12-06 15:56 | rebirth